不安の種を解決する42

いよいよ人生本気で楽しもうじゃないか。そして、くぅおんは今日も行く

闇夜にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば

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まやかしの満月、膨れ上がる顔

Uダキでの騒動からしばらくして旧盆も近づいた頃、校庭でちょっとした盆踊り大会が開かれた。

その晩はものすごく立派な満月で、クレーターも見えそうなほどに大きな月だった。

明るい月の光が町並みをくっきりと浮かび上がらせる。Uダキもいつにも増して夜空にくっきりと怪しげにそびえていた。

私は友人とアイスを食べながら、Uダキのある丘の方を何気に眺めていた。

そのとき、一つの赤い光、いや、光というより火と言ったほうが近い。その火がUダキの方へ落ちていくのが見えた。

(誰か花火でも打ち上げてるのかな)

一瞬胸騒ぎがしたがすぐにかき消され、特に気に留めなかった。

 久遠「しかし、大きな月だよね。」

友人「そう?確かにきれいな満月だけど普通じゃない。」

久遠「いや。でかいでしょ、これは。落ちてきそうだよ。」

 私は、ビルとビルの間のかなり低い位置に見える月を指差す。

しかし、さっきまで眺めていた月はそこにはなかった。

 久遠「あれ?」

友人「どこみてんの、やめてよ。こっちでしょうが。」

友人の指は、はまるで反対側の高い位置に輝く小さな月を差していた。

友人と縁側に腰掛けてほんの数十分だ。こんなに早く月が移動するわけが無い。

目の錯覚か?

辺りの景色をよく見てみれば、なるほど。いつもの月夜と変わらなかった。なんだか気色が悪い。

急に無口になった私が気になったのか友人の視線を感じて振り返った。

友人「ちょっと!顔が大変なことになってるよ!」

鏡をみるために公民館の中のトイレへ向かった。そこに移った私の顔はまるで四谷怪談さながら。こぶが集まったようにボコボコに腫れ上がっていた。鏡に映る自分の顔に言葉を失っていた。

 

闇がかたどるあやかし

薬を塗らなくてはと我に返った時、鏡越しに視線を感じた。目をこらすと、鏡に写った背後の入り口から、得体のしれない黒い物体がじっとこちらをみている。

見間違いであって欲しいという思いで勢い良く振り向いてみた。

しかし“それは”確かにいた。闇夜に溶け込むように。なにかがいるというより、闇そのものがかたどられている、そんな感じだ。

その黒い物体は特に何をするでもなくじっとこちらを“見つめて”いるだけだった。

目をそらすことが出来ずに凝視しているうち、いつのまにか消えていった。長い錯覚から目覚めたような、なんとも言い表せない奇妙な感覚だけが残っていた。

黒い影が横切った、という経験なら何度もある。しかし、それはまるで闇がそのまま物質化したような、そんな物体だった。

あれは一体なんだったのか?人の形のようでそうではない。ゆらゆらと実態がつかめない黒い影。しかし、影のように二元的ではなく、きちんと厚みのある存在。

空間からにょっきりと顕れ、再び空間へと吸い込まれていくような。

その夜は早々に友人と別れ、家路を急いだ。

 

つづく